NASH(非アルコール性脂肪肝炎)

 

❖ NASH(ナッシュ)とは

肝臓内に中性脂肪の溜まった状態を脂肪肝といい、アルコールをほとんど飲まない人に起こる脂肪肝は非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)と呼ばれています。
NAFLDは国内に約2,000万人いると推定されていますが、状態によって2つに大きく分けられます。
一つは良性の経過をたどる単純性脂肪肝であり、もう一つは肝硬変や肝がんへと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。NASHは、国内に約200万人存在すると推定されています。
NASHと診断される多くの患者にはほとんど自覚症状がありませんが、NASHが進行し、肝硬変症や肝がんを合併した患者では倦怠感、黄疸、腹部膨満感等の症状が出現することがあります。

 

❖ NASHの検知方法

血液検査によって、肝機能 AST/ALT比が0.8以上、血小板の低下、肝線維化マーカーの高い値が指標と言われています。
また、血液中の鉄分と関わりのある血清フェリチンが異常に高い値を示すこともわかってきました。

 

❖ NASHが注目されている理由

糖尿病患者の死因で最も多いのは肝がんの8.6%で、肝硬変死の4.7%と合わせると糖尿病患者の13.3%が肝疾患関連という報告が2007年に日本糖尿病学会で発表されました。
この発表以降、肝がん、肝硬変を引き起こすNASHに関する注目が高まりました。

 

❖ NASH発症の仕組み

さまざま研究が進んでいますが、NASHを発症するその仕組みは未だ完全に明らかにはなってはいません。
しかしそれでも現在、2つのステップによってNASHが引き起こされることが広く受け入れられています。

Step 1: 正常肝 → 脂肪肝へ
肥満などが原因でインスリンが働きにくくなり、ブドウ糖が細胞に十分取り込まれなくなった状態をインスリン抵抗性と呼びます。
そのインスリン抵抗性によって肝臓に脂肪が蓄積し、脂肪肝へと変わります

Step 2: 脂肪肝 → NASHへ
鉄、サイトカイン、脂質過酸化などの酸化ストレスがNASHへと進行させます。

 

❖ NASHの診断

患者がNASHであると診断するには、下記の3つの項目を満たすことが必須です。

(1) 非飲酒者であること
非飲酒者とは、エタノール換算で1日20g未満を指します。
参考: エタノール換算1日20gの飲酒量
・日本酒: 1合
・ビール中瓶: 1本
・ウイスキーW: 1杯
・焼酎ぐいのみ: 1杯
・ワイングラス: 2杯

(2) 肝組織所見が脂肪肝炎
A. 大滴性の脂肪沈着
B. 炎症細胞浸潤
C. 肝細胞の風船様腫大

(3) 他の原因による肝疾患の除外
ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などの除外